人間が出来る、立派な人格者とはなにか?

それは・・・大嘘つきになることである。

よくここまで心にも無いことをベラベラしゃべることが出来るな・・・。

そんな自分を傍観者として観察するにそれは大ボラ吹き以外の何ものでもなかった。

意外に簡単に出来ます。
役者と同じように他者を演じればいいのだから。

電話があった。
オレは眠かった。
正直いい加減な気持ちであった。
「ヒロあたしもう耐えられない・・・ウウッ・・・エーン」

自分で選んで水商売の足を洗い、ショボくても月給とボーナスのあるオヤジと結婚したエーからの電話だ。

時刻は夜中3時。
悪いがオレは寝ている。

オレの本音は『なんの話だ馬鹿淫売』だが、泣いている女に理屈は通用しない。

勝手に悲劇のヒロインになっているからだ。

女特有のナルシシズムとも言える。

こうした時はなだめて寝かしてしまうのが一番だ。
明日になれば忘れている。

話を聞き、要約すると『日本つまらない、タイ帰りたい、金かかるから帰してくれない、ごねたら殴られた、どうも旦那は浮気してる』と一方的な主張をまくし立てた。

おそらくは、さまざまな経緯がありエーの言ってることは、自分にとって都合のいい部分だけの抜粋だろう。

それ自体オレは全く信用していない。

タイ女にはまって日本に連れて帰る奴は多い、しかし大きな問題をはらむ行為であること確かだ。

普通に扶養家族がいるだけでも大変なジジイや、安リーマンには本当は不可能である。

なぜなら、ほとんどの淫売どもは貧乏がイヤで水商売に入ったので、外国に行ってまで安い生活したくない。

外貨を持ってタイに来た日本人は、タイでは金持ちに見える。

しかし、現実はしょうもないリーマンだ。

下手にリストラ食らえば、ワークングプアを通り越してホームレスになってしまうくらい、生活力はない。

オレは多くそうしたい日本人を見てきた。

女にハマって反対にタイに来てしまうオヤジ達だ。

奴らの共通点は、バイタリティーの無さだ。

なんのつてもない外国では、自分の力を100%出さないと生き残れない。

もう、会社の看板も、日本人としての社会保障もないのだ。

日本人だという看板なんか、くその役にも立たない。

こうして、最初は

スクンビットの中級アパート−

タイ人エリアの安アパート−

えり好みして仕事見つからないからじり貧−

女に逃げられる−

日本に帰る恐怖感−

最終的には不法滞在で−

入管か大使館に駆け込んで、強制退去のパターンを辿る。

ここまで酷くなくても、内容は似たようなモノだ。

まあ、これとは別な日本に行ったタイ女達も。
こうした日本人の真の姿を見てしまい、当然幻滅する。

幻滅は生活の破綻につながり、浮気、孤独からのパチンコ浪費(悪いタイのお友達は当然いる)、ワル仲間は最初は愚痴友達だが、そのうち悪だくみの相談役になる。

それが旦那にばれると、家庭噴火となり離婚、帰国または日本で水商売に逆戻り。

・・・全てではないが、結構多いパターンだ。

エーチャンは、その予備軍となろうとしていた。

オレは人格者のまねで、その場を凌いだ。

何より眠かったので、早く切り上げたかった。

本音を言えば、他人の家庭なんかどうでもいい。

「馬鹿かお前は、だいたいなんだ!お前が年に二度も帰国するからいけないんだ」

「エーーン、帰りたいー」

「お前と子供の帰国費用で、ボーナスみんなぶっ飛んで、今だに家も車も買えないそうじゃないか!それでも立派な大人といえるか」

「私、タイにいた時だって、自転車で買い物なんか行かなかった。がんばってるのにー・・・ビンボー」

そうなのだった・・・オレ自身が身にしみて知っているのだが、日常生活の大部分で、タイは日本より豊かなのだ。

日本では、オバサンが自転車乗って、スーパーに買い物に行くのは当たり前の行為だ。

でも、タイではそれより遙かに楽に生活できる。
何より貧乏くさくない。

女はこうしたことに敏感だ。

男と違い恋愛?や結婚は感情ではなく、生活向上の手段でもある。

「そんなの当たり前だ!だいたいお前はやりまくって、3年で2人もガキ作りやがって、別れたら子供はどうするんだ。可愛そうじゃないか」

「ビリラムで育てる。お母さん子供好きよ」

相変わらず安易な発想だ。

「あのなあ、日本では子はカスガイと言ってだな、いくら旦那がイヤでも、子供のために我慢するのだ。結婚決めたときだってお前は『惚れるより慣れだ』とか言ってたじゃないか」

「私、離婚するー・・・ウワーン」

「馬鹿者!関西人だってもう少し根気があるぞ。辛抱して、家や車も買い子供達も立派に学校に生かせれば、将来楽なんだからガンマンせい!!」

「エーーーン!!」(号泣)

「わかったわかったエーちゃん、今日はもう寝なさい。明日また電話するから」

いい年して、車も家も家族もない、子はカスガイ、大人なんだから辛抱しろ・・・すべてオレ自身に言いたい事ばかりだった。

間違いなく、お袋はそう言いたいに違いない。

エーちゃんと話しながら、もう一人の俺が言った『よく、いけしゃあしゃあとそんなことが言えるな、このロクデナシ!』。

オレが子供の頃に思い描き、また実際に見た大人達は立派だった。

言うこともなんだか納得できなかったけど、大人ぽかった。

もしかしたら、あのころの立派な大人達も、ただ単に大人を演じていただけかもしれない。

翌日、エーから電話があった。

「あ、ヒロ、もう大丈夫よ。私たち愛し合ってるから。ウフフ」

・・・日本に送り込んだ後も、迷惑な人たちであった。


外道の細道、2007年6月15日


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