ヒロポン軍曹が5年ぶりに日本に帰った。

オレやこいつみたいに海外に住み着いてしまい滅多に国に帰らない奴は、貴重な機会をできるだけ有効にかつ他人から見ると無駄に過ごそうとする。

地元や思い出の土地を意味なく歩き回ったりするのだ。
かつて通った学校、通学路、バイト先、変わってしまった街並みの確認など・・・まあ意味はないけどノスタルジーであり、この機会を逃したら二度と見ることはできないかもしれないと心のどこか感じているための行動。
記憶の最終確認だ。

軍曹もそうしてかつて通った通学路を歩き、3日続けて田舎町を歩き回ったそうだ。
3日目の昼、突然警官に職務質問される。

日本の地方都市には歩行者がほとんどいない。
住民から『怪しいオヤジがいる』と通報されたそうだ。

これを聞いたとき俺はある話を思いだした。

野田友祐さんの旧ソビエト紀行。
旧ソビエト時代のモスクワ、彼は勝手にボートで遊んだり、釣りしたりしただけで通報されなんども警官に職務質問されたそうだ。
自由のない警察国家と不信感からくる相互監視を批判していた。

これと軍曹の例は全く同じではないだろうけど、その根にある部分は同じだ。
部外者への不信と不安。
歩くことですら関係者以外立入禁止の社会不安はなにを意味するのか?

通報者と通報された人、どちらがどれだけ非常識で精神を病んでいるのか・・・?

これはなにも治安の悪い外国の話ではないし、不条理小説でもない。
これが何の根拠もなく世界一安全で豊かな国だと信じ込んでいる国の現実だ。

収容所列島とは制度ではなく心が作り出す現象だ。


外道の細道、2009年8月13日



にほんブログ村 その他日記ブログ ダメ人間へにほんブログ村 大人の生活ブログ タイナイトライフ情報(ノンアダルト)へ