あるMPでコンチアと談笑しながらモデルの品定めをしていたら、金を払うカウンターで一人の客がクレームをつけ始めた。

何事が起こったかと居合わせた客も娘もみんな凝視。

コンチアが全員、彼を取り囲んで熱心にクレームを聴き始める。

客は日本人で図体のデカイ体育会系、30歳に届かないくらいの男だった。
顔を真っ赤にして、かなり立腹のご様子。

娘を跪かせんばかりに離さず、コンチアの制止も聞かず、一人大声で絶叫していた。
唖然としたことに、日本語でまくし立てていた。
英語もタイ語はわからないようだった。
もちろん、誰一人として理解できない。

しばらくすると、コンチアの一人が困って私に救いを求めてきた。

「○○○・・・あの客、なに言ってんだかわからない・・・通訳してくれ?」

関わりたくなかったが、そばに寄って言い分に耳を傾けてみた。

どうやら、絶叫男、娘のサービスに納得できないから金を返せということらしい。
コンチア全員にその旨をそっと伝えると、それはムリと、にべもない。

私はその娘の裏を知っていた。

当時、警察の高官が口説いていて、娘が他の客と座っているだけでMPを営業停止させると脅かしてごっそり時間買いするので有名だった。

最悪なことに、これからそのわがまま高官が店にやってくるというところだったのだ。

店では、その客が本日来店すると知るや、娘に客をとらせないように控室に隠したりして、特別待遇だった。
その日はどうしたことか日本人客の目に留まってしまい、事情を知らない新人コンチアが受けてしまった。

みんながそわそわし始める。
私は成り行きを見守って無視していたが、内心、面白がっていた。MPで滅多に見られない余興だ。

同じ日本人のよしみというのか、野次馬根性とでもいうのか、マネージャーを呼んで、「B3,500、おれが払ってやる・・・あの客に渡して、とっとと帰してやれ」と提案すると、それは申し訳ないということになって、店は半額だけ返却するということになった。(半額というのは、実は店の取り分ではなく、娘の取り分を男に渡してやれということなのだが)

今度は娘が承知しない。
さらに悪いことに、男は半額ではなくて全額返却を強く要求していた。

例の高官が店にやってくるのも時間の問題・・・よし、おれが予約していたことにしよう。
高官が来たらどうしようかと思ったが、その日本人客がどうなるか気の毒だった。

皆に協力を誓わせて、別のお客が予約しているのでとその娘を連れてこさせた。
絶叫男、「話は終わっちゃいねえぞ」と怒声。

私は階上に向かうフリをして娘とエレベーターに消えた。

そっと娘に訊くと、男は確かにヤッたことはヤッたらしい。

後からマネージェーに訊くと、絶叫男はほどなく諦め、しぶしぶ半額受け取って帰っていったそうだ。

「よかった。例の客、まだ来ない」

「いたらどうなっていたか?」と訊いたら、「もちろん、あの日本人はまともな姿では戻れなかっただろう」とニコリともせず言う。

コンチアはみんな「やれやれ終わった!」と笑いながら仕事に戻ってきていた。
みんな真剣な顔だけ見せて、内心はいつ終わるかと厭き厭きしていたのだ。

実際過去に、韓国人の客がこの娘にクレームをつけてボコボコにされたことがあった。
台湾人も一人やられた。いずれも本当の話。

店にとっては至極厄介な客だが、一方の日本人はかなり威圧的に娘に接し、顎で命令する類の男だったそうな。
彼はそこの店の客層ではなかったのである。

「ああいう客はペッブリーあたりのMPに行けばいいんじゃないか」とコンチアもしきり。

娘は香港映画に出てくる女優みたいな顔で容姿は一級品だったが、男を鼻であしらうようなタイプの女だった。
客がクレームをつけたくなるのも分からないでもない。

その高官は、来店するたびに10万バーツの札束と拳銃を娘に見せて、どちらがいいかと愛人関係を迫っていたという話である。

こんな女と下手に関わりあって、自分の居場所など知られていたら、どうなることか言わないでもわかるだろう。

名前と携帯番号くらいなら知られても怖くはない。(携帯の番号を教えるとしたら、いつでも捨てられるプリペイドの個人用)短期滞在であれば数日中に帰国するから逃げられる。

が、タイ在住で自分のコンドーに商売女を連れ込む御仁の多いのにはびっくりする。
少なくとも私は避ける。

その娘が自分以外にどういう客がいるか、どういう男と関係を持っているか、考えたほうがいい。

外道のヒロポン軍曹のソープ道に「決して自分の住所や電話番号を女に渡さない」「プライベートで女の子と付き合わない」という項目があるが、理に適っている。

中級レベルの旅行者が、安易に深入りしたくなる(つまり、遊ぶだけでは物足りなくなってきて、ちょっと本格的にパトロンの物真似ごときを始める)のがいちばん危ない。

「おれはタイの遊びをよく知っている・・・」と思い込んでいる御仁よ、タイに何十回遊びに来ていても、所詮、ただのお客の域を出ないことを知ろう。

タイ人の知り合いがいるだけでは何の助けにもならない。
権力の前では、一般のタイ人なんて犬か猫に等しい。

その娘の友だちなどを知っていてもあまり信じないほうがいい。

いくら親切にしてくれた過去があっても、娘とトラぶった場合は豹変する。
裏切られることもしばしばである。

裏を知っていても、タイ人は口をつぐむことのほうを好む。
たとえどんなトラブルに発展しようと、それはあなたの問題であり、日本人のようにお節介は焼かない。

また、誰かに「トラブルがあったらいつでも相談に乗る」と言われ、いいコネができたと喜んでいる御仁がいるが、金銭的な見返りなしで誰が赤の他人を助けるか考えたほうがいい。

弱みを握られたらどこまでつけこまれるか、身を持って知るべきである。
こいつからは金を搾り取れるとみると、どんな職種の人間でもマフィアに近い存在になりうるのがタイ人社会である。


MP嬢の裏事情、2009年2月24日

外道の細道、2009年1月30日


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