今日は下校の話。

労務者と変態は同義語だった。

『さきほどーー警察署から連絡があり、学校付近で労務者風の男が徘徊しているのが目撃されました。念のため本日は集団下校となります。担任の先生の指示を守ってみんなで安全に下校しましょう』

考えてみれば凄い話だが、こんな校内放送がオレの通っていた小学校ではあった。
住んでいた地域が酷かったのだろうけど、幼い子供にそんなことわかりはしない。

半径数百メートルが全世界であり、世界標準だった。
労務者とは土方、土建屋のことだと思っていたが、同時に酒に酔った乱暴者、変態をも意味していた。

不幸なことにオレの生家は土建屋だったので、実のオヤジからして職人で、仕事関係者で家に立ち寄るすべての人間は労務者風だった。

千葉から来た、住み込みの見習い職人カズちゃんも労務者だが、その前にアフロヘアのヤンキーだった。

全員地下足袋だった。

集団下校した先は、労務者で満載の自宅件事務所で、あまりに聞こえが悪いので『ーー組』から『ーー建設』に名前を変えたとお袋が言っていた場所だった。

こうして労務者から逃れて労務者の巣にたどり着き、楽しく遊んでいた。

土建屋の事務所は子供の遊び道具でいっぱいだった。
本職の使う道具なので、重くて危険だが楽しかった。

そんなオレでも思っていた。

労務者は遊んでくれて、楽しいいい人たちだが、おしなべて顔が怖く、夜になると必ずヨッパライ、時折警察の世話になり(お袋曰く、若い職人だからしょうがない。今お父さんが引き取りに行った)、言葉使いの大変荒っぽい人達だと。

そして・・・どこまで意味が分かっていたのかわからないが、変態なのだと思っていた。
オレは子供の頃から変態に囲まれて暮らしていた。
オレがこうなってしまったのは子供の頃の環境が影響しているのだろうか?そう思うと気
が楽になってきた。そういうことにしよう。

ヒロポン軍曹の家も土建屋で、その上田舎だったので『熊が出たから集団下校しましょう』だったそうだ。

軍曹は変態と野獣に囲まれて育ったと思うとオレはまだ恵まれているのかな・・・イヤ違うような気がするが・・・なんにせよ子供の世界は平和で楽しかった。

煩悩の夕暮れ、2011年6月10日号


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