それぞれの項目でMPの経営(マネージャーの手腕)、コンチア、エージェントのお仕事に触れたが、MPの運営はこの三者が一体となって密接に絡んでいるから、正に「MPの三位一体」と呼ぶに相応しい。
働く娘はただの駒に過ぎない。

最近のMPはエージェントが自分の抱えている娘を働かせる際、一日2ロープの仕事量を保証したりして娘を受け入れる。

例えば、ある店に娘が50人程度必要だとしたら、その店に娘を下ろすエージェントが5人いたらエージェント一人につき娘10人までが定員となる。
MPが各エージェントに娘一人につき2ロープの仕事量を保証するとしたら、50×2ロープ=100ロープが毎日の売り上げ目標となる。

一日累計で80ロープしか売り上げがなかったら、20ロープも不足する。
50人の娘の中で、保証通りの2ロープの仕事にありつけた娘もいれば、1ロープしか仕事がなかった娘も出てくるだろうし、3ロープこなせる娘も出てくる。

客が選ぶのだから、そういうことになるのは当然だとしても、問題はそんなに簡単ではない。

保証が守られなかった場合、まず娘に不満が出る。
娘から搾取して食っているエージェントはもっと不満に思う。

1ロープも仕事にありつけなかった娘のエージェントたちは、当然、死活問題になる。
エージェントが早速マネージャーにクレームをつけに行くことは必至である。

コンチアの推薦に差別があったり落ち度がないか、娘に均等に仕事を与えているか等々。
マネージャーはミーティングでも召集してコンチアを叱咤激励することになる。

どんなビジネスもこんなことは当たり前であるが、客のいなくなったMPでも毎日こんなことが繰り広げられているのだ。

客にしてみれば、ここは娘の数が少ないなと思うMPでも、その店はその程度の規模で食っていけるので、娘をあと50人増やす必要はない。

その規模の店に100人娘がいたら共食いになる。
娘一人につき仕事量が減るから、飯を食えなくなり不満につながる。

エージェントにとっても同様で、こういう店が他のエージェントから娘を数人ずつ受けて100人の店にする意味は全くない。
急に客足が増える保証はどこにもないから、そのMPは50人で十分なのである。

反対に、ここはいつ来ても娘の数が多くていいなあと思う店などは、客にとってありがたいだけで、働いている娘や下ろしているエージェントにしてみれば仕事量が少ない(=収入減という状態がすぐに起こりやすい)問題が起こる。

地の利が良く、旅行者などに人気があり、連日400人の客が押し寄せるMPでは娘がいくらいても足りないという状況になることもあるが、こういう大型店の場合、客足が少なくなると、100人の娘の中で今日は1ロープも仕事ができなかったという娘が数多く出ることになる。

ここら辺のバランスというのが難しい。
客足と娘の数が一致していないとまずいのだ。

この状況は店の知名度や立地によって、週によって(月の最終週の給料日前は客足が最も鈍る)、曜日によって(土日に娘の出勤率が減るのは最も客足が少ないからである)、様々な要因によって(長期休暇など)、毎日変化する。

いつ行っても娘が売り切れているところは肩透かしを食らった客にとっては迷惑な話だが、店にとっては商売繁盛、働いている娘にとっても、エージェントにとってもありがたい。

いつもたくさん娘がいるところは客にしてみたらありがたいが、売れ残りが出てしまうと店にとっては甚だ困った状況で、娘にとっても(娘から金を搾取しているエージェントにとっても)働き口としては良くない。

マネージャーは、店の収入源の確保に努めなければならないが、同時に娘とエージェントの食い分を確保してやる努力も必要になり、エージェントから直接クレームを受けることになる。

もしこういう状況が続くとすれば、エージェントは自分の抱えている娘を全員この店から撤退させるという脅しをかけることができる。
売れっ子の娘などがいたら店としては損失である。

その娘目当てに客が他店に行くことになるからで、客を持っていかれる。

こういう問題を回避するために、店としては娘を大幅に増やさない(ラインアップが限られるというデメリットが出てくる)、バランスの取れた娘の数で売り上げを増やしたければ入浴料を値上げする(当然、客足が遠のくリスクは負う)、娘から不満を出させないために娘の取り分を増やしてやる(店の売り上げが減る)、客足を増やすために入浴料を下げる(安ければ客は集まるようになるが店の売り上げは減る)など、店によっていろいろ試行錯誤をこらしているようだ。

こういう状況は時に娘のサービスの質まで決めることさえある。

娘がたくさんいても一人の娘が満足する仕事量をこなせない店は娘が客にチップを乞うようになることは必至で、娘一人が満足すべき仕事量をこなせる店は、娘は手練手管で客からチップを乞わなくてよくなる。

自分の取り分で十分飯が食えるからである。

また、店の客層にも影響されるだろう。
外国人の旅行者が多い店の娘はどうしてもチップを大目に乞いたくなるのが人情というものだ。

旅行者からチップは乞いやすい。

あまり金がない客層が中心の店の娘は、チップを望んでも客に金がないのだから諦めるしかない。
仕事した自分の取り分だけで満足せざるを得ない。

『外道』の投稿の中で、高級MPを独りでポツンと訪れ、「娘が少ない」、「大した娘がいない」と結論づけている御仁がいるが、店を訪れた時点で見かけた娘は実は売れ残りのカスであって、上玉のイイ娘はメンバーとVIP客に占有されてしまっていて、回転が良く繁盛しているゆえに娘が少なく思える店かもしれないことを読めない、旅行者に近いド素人の考察ではないかと疑ってみる必要がある。

反対に、この店はいつ来てもたくさん娘がいていいなあと思う店は、客足よりも大幅に娘の数が多い結果であり、娘一人につき仕事量が減るので、近い将来、この娘はエージェントと共に他に流れてしまうかもしれないと考えられるような店である。

どんな娘を指名してもハズレがない店と言明している投稿もあるが、(こいつ、どう考えてもMPの経験が少なく悪趣味の結果、低いレベルで満足できる客なのでそう思えるだけなのではあるまいか?)と疑ってみる必要があるかもしれない。

特に、タイ男の趣味は悪いと見下している旅行者の投稿もチラホラ見かけることもあるが、皆、そうではない。

タイ人の最上級の客層の御仁たちは、日本人旅行者なぞ鼻にもかけないようなイイ女をいくらでも自由にできる男たちで、女遊びにいくらでも金を出せる御仁たちなのだということを知る旅行者少ない。

最上級の客層のタイ人は日本人旅行者が到底知り得ないイイ女を星の数ほど抱いてきている。
また、そういう女たちを相手にできる“金に余裕のある御仁たち”でもあるのだ。

一見に過ぎない旅行者の一回限りの体験談は、とにかくアテにならない。
長年タイに在住している御仁などの投稿も、時には何か勘違いではないかと思うような内容を含んでいることすらある。

余談であるが、タクシーの運ちゃんがMPの営業に大いに貢献していることも知っておこう。

有名なところで「プラザ」の地下にある「キューピディ」、アヌサワリ近くの「J-ONE」などは、客を連れてきてくれたらバックマージンとして1ロープにつきB200~B300を運ちゃんに支払っている。

それを通達して約束しているのだ。

ピンクラオ(トンブリー地区だが、タイ人は普通、“ファントン”と呼ぶ)のMPでは、客がタクシーで来たと知ると自動的にB200~B300を上乗せしてくる。

団体さんを連れてきたガイドには、これまた店から相当なバックマージンが転がり込む。

きょろきょろして入ってくる旅行者、この店には初めて来たなというような客は、コンチアは金額を誤魔化すのに苦労しないだろう。

つまりこういう様々な要因がボッタクリを生むわけだが、ボッタクリは状況さえ許せばどこでもやっていると考えたほうがよい。

ボラれた金はいったい誰のポケットに転がり込むのかと言えば、店や娘ではなく、大半はマネージャーかコンチアである。

多くの旅行者が訪れる有名店が軒を連ねるラチャダーピセーク通りに面したMPのほとんどは、連日娘がよく売れるから、コンチアがムリやり客からチップを乞わなくてもよいのだが(入浴料から自動的にコンチアには金が入ってくるため)、フツーの旅行者はコンチアにあまり多額のチップをやらない。

大した副収入にならないのを見越したコンチアが客からボるという結果になる。

客足の少ない店では娘の売れが悪く、コンチアに自動的に入ってくる金が少なく、不満に思うコンチアがやはりボる。

『外道』サイトでは「ボラれる客は、どこに行ってもボラれる」というような常識が定着しているが事情はちと違う。
この客は無知だから、金がありそうだからボるのではなく、ちゃんとした経済的必然性があるからやるのである。

マネージャーによって、コンチアのこの行為を禁止している店は、旅行者に依存しない営業に自信のある店である。

マネージャーが積極的にコンチアにやらせている店は、どうせ店の本当のオーナーは毎日現場などにいないからバレるまではやっている。
(バレたら、その従業員は当然クビになる)

また、フツーの客は、裏方であるエージェントと知り合うことは極めて稀であるから、エージェントの動きなど全く意識しないで遊べるが、エージェントによって娘の教育、娘との契約内容がかなり違う。

従って、娘の店でのマナーは店の教育というより、エージェントによることが多い。これも『外道』の常識とは違うだろう。

店が教育するのは求職時のみで、店の規則などは無きに等しい。

娘が客から貰うチップを搾取しないエージェントだったら、娘は客がいくらチップをくれるか、あまり意識せず安心していられるが、全額搾取するエージェントだったら、少しでも多く客からチップを乞うことになるだろう。

エージェントに発見されて搾取される分をとっておき、ウソをついて自分の取り分を確保するという“横領”行為をする必要が出てくるからだ。
チップがB100では隠しようがない。

娘はエージェントとの契約で1ロープいくら貰えるということになっているが、雛壇の中に座っている値段が同じ二人の娘たちは、エージェントが違えば手取りも違ってくる。

二人の娘は値段が同じだが、1ロープごとにB500を受け取る娘もいれば、B400しか貰えない娘もいる。
契約内容が違うから仕方がない。

娘によってサービスに違いが出てくるのは個々の娘の仕事へのスタンスにもよるが、金の必要性からでもある。
B400しか貰えない娘は、客からチップを多く乞おうと懸命になるだろうことは目に見えている。

娘は「どうすれば客からチップをたくさん貰えるようになれるか?」と考えるから、娘から娘に、この仕事の奥義みたいなものが伝わっていくことにもなる。

エージェントが元MP嬢であれば自分の抱えている娘に直接教えることができるが、皆元商売女であるわけではない。エージェントは男である場合が圧倒的に多い。

男は自分で女遊びの経験はあるわけだが、自分が客として遊びに行った経験と、自分が抱えている娘に教えられることとは別物である。

コンチアがMPに求職する際、店が雇う条件は、お抱えの娘を何人引き連れていかないといけないということがある。
5人連れてきたらひと月いくら保証するといった条件で雇われる。

コンチアお抱えの娘とというのは、つまりコンチア自身がエージェントなので、店では自分お抱えの娘を推薦するに決まっている。

他のコンチアの娘を推薦してもご自分に一銭も金が入ってこない。MPの実質トップであるマネージャーはいちばんウマミのある役職で、店に在籍する娘全員からロープごとにB100などが自動的に自分の懐に転がり込む。

ひと月の月給で考えれば、マネージャー、コンチア、エージェントの中には、全員ではないが、店に遊びに来ている客などよりも遥かに金があるという奴も少なくない。

「客からB100貰って毎日の生計を立てている哀れな奴だ」などとバカにして見下している旅行者がいたら、とんでもない。

蔑む必要もないし恐縮する必要もないし、顔を立ててやる必要もないが、ご自分よりも金がある奴にB100のチップをやっているかもしれないとは気がつかない旅行者が、いかにモノを知らない人種かお分かりであろうか。

風呂屋に遊びに出かける大半の客が気にすることは娘のラインアップと金額くらいだろうが、こういう“MPの裏の事情”を知って遊びに出かけると別の視点から眺められ、理解も楽しみも一層深まるのではないだろうか。

裏事情を知っていれば余裕を持って遊べ、得することもある。
金を払うのはこちら客なのだから、ご自分が主導権を握って楽しく遊びたいものである。


新 MP嬢の裏事情、2010年2月20日

外道の細道、2010年2月1日


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