知り合いから、大量のイカの塩辛をもらった。
とても食いきれないので、ヒロポン軍曹にやった。

奴はこうしたジジ臭い食い物が好物だ。

しかし、さすがの自衛隊も大量の塩辛に困ったようだ。

イカの塩辛は、普段、ショボイビン詰めで売られている。

実は、生モノの塩辛は、あれぐらいの大きさで丁度いいのだ。

腐る前に食ってしまおうと軍曹は考えた。
男の料理趣味ならぬ、自衛隊の野戦食演習だ。
「見つけたッスよー!」

「・・・なにがだ?」オレはすっかり忘れている。

「塩辛を大量に食う方法ッスよ。飯と一緒に食っててもなかなか無くならないから工夫したのッスわ」

「フーン・・・」

「聞きたいッスか?」

「言いたいのか?」

「じゃ、教えるッスわ」勝手に軍曹は話し始めた。
軍人を止めることは出来ない。

ヒロポン軍曹が開発した驚異の創作野戦食『塩辛スパ』。

乾麺のパスタは当然、塩辛も一応日持ちし、鍋一つで出来るので、軍隊向きというか、どんぶり飯の好きな(皿洗うの嫌い)男向きの料理だそうだ。

「イカスミスパとかも見た目汚いッスけど、うまいじゃないッスか」

「アレは見た目と違い、生臭いからうまいのだ」

「塩辛スパも近いッスね、味的には」

「まあ、そんな気がするな。うまいのか」

「旨いことは旨いッスけどねー」

「なんだ?」

「見た目が汚いッスわー」

「・・・まあ、お前の料理だし、その点は最初から期待してなかった」

「半端じゃないッスよ。パスタと塩辛が絡み合って、見た目は蟯虫の中に蛭がのたうってるみたいッスわ」

「聞いてるだけで吐きそうだ」

「その上、味はイカスミ以上に生臭くって、海のゲロみたいっすよ」

「お前・・・本当に旨かったのか?」

「旨いのッスって!でも食後にゲップはしない方がいいっすね。臭すぎて、貰いゲロしそうになったスから」

平民のみんなは、勇気を振り絞って塩辛スパに挑戦しよう。

軍曹と同じように、気持ち悪くなったが旨かった人は、立派なオヤジです。

外道の細道、2007年10月4日


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